序文
私は、この小著において、北インドの高名なキリスト教の僧、サドゥー・サンダー・シングが、万年雪に閉ざされた大ヒマラヤの霊峰、カイラスにおいて二度出会った老聖徒の話を明らかにしようと思っています。
本書の各ページに収録されたものは、私、アルフレッド・ザヒル自らが、サンダー・シング自身の口から聞き、筆記した資料を英訳したものです。
天国とその住民に関する聖徒の談は、多くの人々にとっては、大いに霊感をそそられる啓示になると思うが、他方、この話に今まで経験したことのないほどの戸惑いを覚え、聖徒の主張に絶対の信頼を置くことに、困難を覚える人々も出てくるでしょう。
だが、これは、まったく私的見解と信仰の問題であり、誰もが自分の選ぶ通りに考える自由をもっています。
そこで、私達は本書に記録された話をどう判断するかは、もっぱら読者に委ね、話の真偽を問うことは控えたいと思います。
とはいえ、聖徒の話は多くの人々にとって、真実、霊的な助けの元になり、彼らの信仰を強めてきた。今後もそうあり続けるでしょう。
年齢318歳という聖徒の存在を証明することはまた、別な問題です。
この問題は、彼の住む場所に巡礼する者によってのみ解決できます。
多くの人々が、この聖徒についてのサンダーの証言を批判する用意ができているにもかかわらず、ヒマラヤの険しい崖と岩場を超えて、700キロの道のりを旅し、聖徒の存在を決定的に証明あるいは反証する用意のできている人がほとんどいないのは遺憾です。
聖徒の存在を擁護するために一言だけ言えば、サンダーは主に捧げられた僕、人生を神への奉仕のために投げ捨てた真の神の人であり、猜疑心を懐かれるような人物ではまったくないということです。
読者は、ここに収録された話に性急な判断を下さぬよう、注意していただきたい。
この中には、霊魂にとっての真実の糧と、神学書の山によっても、注釈書全巻をもってしても、解決も説明もできない深刻なる問題の数々を解く鍵があるからです。
この小著が成功し、そこに記録された驚異的なことがらを読むことによって信仰をかきたてられ、助けられるキリスト者がいたとすれば、それは人生を取り巻く神秘を明らかにしてくれた聖徒のおかげです。
これらのページを読むことを通して読者の心が感動に触れ、神の光にいっそう近づけられれば、著者のこの仕事も祝福されたことになる。 アルフレッド・ザヒル